コンセプトミニアルバム『off』について。
初回の記事に相応しい、よい記事を書くことにする。
今回は、題にもある『off』(2021)、こちらについてつづる。
個々の楽曲は、後々述べていくとして、全体の概観で思ったことを述べよう。
自身、そしてフライングドック社が述べている通り、今回はコンセプトミニ「アルバム」である。
彼女はこれまでに、『群青インフィニティ』(2019)や『Rainbow』(2017)といったアルバムを発売している。
一見すると、今回は、コンセプトミニ「アルバム」なのだから、上述した「アルバム」に近いのだろうと思うが、私はそこに、若干ニュアンスのズレがあると考えている。
それは、表題曲に関するものだ。
当然、以前発売した、『群青インフィニティ』(2019)や『Rainbow』(2017)には、群青インフィニティやRainbowといった楽曲が収録されており、今回のアルバム『off』(2021)にもoffという楽曲が収録されている。
だが、これらには大きく、そして明確な違いが存在している。
それは、表題曲の作詞作曲が、東山奈央自身かどうかということだ。
なんだ、それだけかと思われるかもしれないが、意外とこの問題は深い。
まず、これまでの『群青インフィニティ』(2019)、『Rainbow』(2017)の表題曲は、周知の通り東山奈央さん自身が作詞作曲を行っている。
しかし、今回のコンセプトミニアルバム『off』(2021)の表題曲offは、彼女が作詞作曲せず、三浦康嗣さんが作詞作曲を務めている。
これらからわかる通り、アルバムの作り方に差異があるのではないか。
『群青インフィニティ』(2019)や『Rainbow』(2017)は、彼女自身の楽曲、つまり群青インフィニティやRainbowを中心に、別の方の楽曲でアルバムを構成するのに対し、今回のコンセプトミニアルバム『off』(2021)では、”off"というコンセプトに則って彼女自身が、その構成員の一人となり、表題曲とは別の、あした会えたらを執筆している。
その曲の感想等はここでは割愛させていただくが、なんともこれは、ベーコンの帰納法か、デカルトの演繹法か、といったような話である。
別の視点から考えると、コンセプトミニ「アルバム」と冠してはいるが、『歩いていこう!』(2020)や、『灯のまにまに』(2018)といったような、表題曲を自身が作成していない、シングルスのような性質を持っているともいえるだろう。
また、最近では、実質シングルスだが、自身が作詞を行っている『Wonder Love』(2020)も発表されている。
こうなると、どこか、自身が作詞作曲をした曲を表題曲にし、アルバムを作成した方が、東山奈央の魅力が引き出されるのではないかと思われる。
だが、それは、東山奈央氏は、これを全く問題にしない。
なぜなら彼女は、自身が作曲していようと、してまいとも、自身が作詞していようが、していなくとも、すべて我が子のように情熱を注いでいるからだ。
ここが、ファン全員が彼女を好きになるポイントであるし、常に新しいものを提供してくれるであろう期待感の表れでもある。
最後に、あえて言おう。声優歌手東山奈央は進化し続けていると。
『Wonder Love』(2020)、『off』(2021)といった二曲は、直近の二曲でもある。
そこで、自身の新しい可能性を広げていることは自明である。
現在進行形で、成長中の東山奈央氏を、私たちは片時も見逃すことはできない。